皮膚外科とは

皮膚外科イメージ

皮膚外科では、皮膚に生じた疾患を外科的に治療します。具体的には、皮膚に発生したできもの(腫瘍)の摘出手術を行っています。

腫瘍は、大きく分けて悪性と良性があります。悪性の場合、他の部位に転移したり、増殖することで正常組織を破壊し、命に関わる場合があります。検査の上、もしくは明らかに悪性度の高い腫瘍が想定される場合には、基幹病院を紹介いたします。
良性腫瘍には、粉瘤、ほくろ、脂肪腫などがあります。当院では、悪性度の低い悪性腫瘍(基底細胞癌やボーエン病など)と良性腫瘍の摘出手術を行っています。
良性腫瘍は、放置しても問題のないものがほとんどですが、見た目が気になるとか、擦れたり当たって邪魔だという場合の切除も可能です。整容的なことでお悩みの方もお気軽にご相談ください。

このほか、やけど、ケロイド、手術後の傷につきましても診療範囲となりますので、一度ご相談ください。

粉瘤

粉瘤とは

正確には「表皮嚢腫(=類表皮嚢腫)」、「外毛根鞘性嚢腫」、「脂腺嚢腫」と呼ばれているものの総称です。皮下に袋状のできもの(嚢腫)ができて、その内部には皮脂や垢が詰まっています。大きさは数㎜~数㎝ほどの大きさで、ドーム状に隆起します。
主に顔面、頸部、体幹といった部位で発生する良性腫瘍で、しこりなどを感じることはありますが、通常、痛みやかゆみなどの症状がみられることはありません。
ただし、内部の皮脂や垢に対する異物反応として炎症が起きたり、細菌感染を起こしたりすると、患部は赤みを帯び、腫れや痛みなどを生じます。これを炎症性粉瘤と言います。

治療について

基本的には良性腫瘍なので放っておいて問題ないのですが、同じ箇所によく炎症を起こしていたり、粉瘤自体が大きく(直径2cm以上)なっていたりする場合は、外科的治療となります。この場合、粉瘤の中身だけでなく、嚢腫壁(中身を包んでいる袋状のもの)まで切除していきます。
また炎症性粉瘤であれば、応急処置として、切開して膿や内部に溜まった垢を排出し洗い流すのが最善です。抗菌薬を使用することもあります。粉瘤が腫れている間は、化膿しやすいため、切除するのなら腫れがひいてからになります。
毛包が炎症を起こした「せつ(漢字はやまいだれに”節”)」は、炎症性粉瘤と鑑別しにくい場合も多いですが、同様に内部に膿が溜まっていることが多く、いずれも切開排膿処置を要しますが、袋は残っていませんので、後日切除する必要はありません。

脂漏性角化症

脂漏性角化症とは

表皮に発生する良性腫瘍のひとつで、老人性疣贅(疣贅とはイボのこと)とも呼ばれています。これは加齢によって発生しやすくなるもので、主に日光が当たりやすい顔面、頭部、胸背部、手足などにできたシミ(老人性色素斑)が盛り上がっていくケースが多いと言われています。その大半は境界がはっきりした直径1~2cm程度で1mmほど隆起した褐色や黒褐色の局面です。痛みやかゆみなどの症状はなく、潰瘍化することもありません。

脂漏性角化症は、年をとるごとに増えていくものですが、20代の頃からみられることも珍しくありません。また似たような皮膚疾患(悪性黒色腫、基底細胞がん、日光角化症、ボーエン病 など)もあるので、これらと鑑別する必要もあることから、ダーモスコピーによる検査をすることもあります。また短い期間で多発している場合は、内臓のがんが併発していることも考えられます。

治療について

悪性に変化することはないので、大型化しない限りは切除する必要はありません。ただ切除を希望される場合は、液体窒素で患部を焼いていく凍結療法、レーザー療法、外科的切除などの治療を行っていきます。

毛母腫

毛母腫とは

石灰化上皮腫とも呼ばれるもので、皮膚の一部がまるで石灰のように硬くなってしまう、毛包細胞由来の良性腫瘍です。

これは主に小児期の顔面、頸部、腕といった部位の皮下で石のような堅い腫瘤(サイズは1~3cm程度)ができるというもので、自覚症状はあまりみられないとされていますが、患部を押すことによる痛み、表皮が薄くなって穴が開く、細菌に感染することで腫れ上がることもあります。なお良性といってもサイズが大きくなれば、悪性腫瘍との鑑別が困難になって、摘出しなければならない事態になることもあります。ちなみに発症の原因については、現時点では特定できていません。

治療について

治療をする場合は、外科的切除となります。この場合、局所麻酔下で行われ、侵襲性をできるだけ低くできるよう皮膚を小さく切開して、腫瘍を取り除いていきます。基本は日帰りでの手術となりますが、小さなお子さんや腫瘍が大きいという場合は、基幹病院で全身麻酔下での摘出を行います。

神経線維腫

神経線維腫とは

シュワン細胞(末梢神経を構成する細胞のひとつ)に由来するとされる良性腫瘍で、腫瘍性細胞をはじめとする様々な細胞が増殖することで腫瘍が発生します。腫瘍は半ドーム状に隆起した指の先ほどの大きさの軟らかなもので、皮膚色や淡紅色をしています。年齢を増すごとに数が増えて大きくなっていきます。自覚症状は少ないとされていますが、皮下で腫瘍が発生すると圧痛がみられることが多いです。ちなみに神経線維腫1型で発生する神経線維腫は多発し、神経の走行に影響を受けることなく、皮膚~皮下で腫瘍が発生していきます。

治療について

神経線維腫は、皮膚にあって気になる場合は、外科的治療によって切除することができます。

軟性線維腫

軟性線維腫とは

頸部をはじめ、腋窩、鼠径部といった比較的柔らかい皮膚の部位で発生する直径1cm程度の半ドーム状~有茎の腫瘍を言います。色は淡褐色や肌色です。痛みやかゆみといった症状はありません。

これも良性の皮膚腫瘍なので経過観察でもかまいませんが、衣類に擦れるなどして炎症が起きることもあります。また加齢と共に大きくなるのも特徴で、だんだん目立ちます。なお発症の原因は、老化、肥満、物理的刺激などが挙げられますが、現時点では特定できていません。

治療について

治療が必要と判断されると、液体窒素による凍結療法をはじめ、物理的に軟性線維腫を切除する外科的治療、炭酸ガスレーザーによって細胞を破壊して切除するといったことを行っていきます。

母斑(黒子)

母斑(黒子)とは

母斑とは、細胞分裂をしていく過程で遺伝子が変異をきたして細胞の一部が増殖、それによって色調や形態などの異常が中心となって起きる限局性の皮膚病変のことを言います。

母斑は病変を構成している細胞によって、メラノサイト系、間葉細胞系、上皮系、血管系に分類されます。さらにメラノサイト系母斑では、母斑細胞が関係しているかどうか、発症部位によってさらに細かく分類されます。中には、これといった治療をしなくても経過観察で済むこともありますが、整容的な観点から治療をすることもあります。

代表的な母斑の種類

表皮母斑、脂腺母斑、色素性母斑、スピッツ母斑、扁平母斑、ベッカー母斑、太田母斑、蒙古斑、青色母斑、軟骨母斑、結合組織母斑、苺状血管腫、単純性血管腫 など

治療について

治療方法は、診断された母斑によって内容は異なります。多くは外科的切除、凍結療法(液体窒素)、電気メス(サージトロン)、炭酸ガスレーザー、血管内治療などを用い、必要な場合はこれらを組み合わせることもあります。また内容によっては、複数回の治療を要するものもあります。

日光角化症

日光角化症とは

紫外線を浴びやすい頭頚部や腕、背中など、いわゆる露光部で発症する表皮内がん(がん細胞が表皮内で留まっている状態)を日光角化症と言います。なお、このがん細胞が真皮まで浸潤している場合は、有棘細胞がんと診断されます。

高齢者に発症しやすいのが特徴で、痛みやかゆみなどの症状はみられません。ただ皮膚の表面はカサカサしていて、かさぶたなどが伴う形が整っていない直径1~2cm程度の紅斑がみられます。老人性疣贅(脂漏性角化症)と間違いやすいのも特徴です。

治療について

治療に関しては、外科的切除で病変を取り切っていく。もしくは、凍結療法や外用薬(イミキモド、フルオロウラシル など)による治療です。

ボーエン病

ボーエン病など

日光角化症と同様に皮膚の表皮内に発生するがんのことです。高齢者に発症しやすいのが特徴で、日光(紫外線)やHPV、ヒ素などが原因で起きるとされますが、特定できない場合も少なくありません。

主な症状ですが、日光が原因といっても露光部に限らず、非露光部や全身に皮膚症状がみられます。具体的には、赤褐色や黒褐色のゴツゴツした軽度に隆起した境界がはっきりしない皮疹(表面にかさぶたや鱗屑がみられる)がみられます。胴体や手足の被覆部に発生することが多いです。痛みやかゆみなどの自覚症状はみられませんが、放置が続けばがん細胞が真皮まで浸潤し、有棘細胞がんに進行することもありますので注意が必要です。

治療について

治療は原則、外科的切除です。つまり手術によって、がん細胞を取りきるようにします。手術では取りきるのが困難と判断されると、凍結療法やフルオロウラシル(5-FU)などの外用薬を使用していきますが、この場合は再発する可能性があります。

基底細胞癌

基底細胞癌とは

基底細胞という表皮最下層の細胞に類似しているためこの名前が付いていますが、実際には毛穴から生じる悪性腫瘍です。発がん因子としては、紫外線をはじめ、放射線、ヒ素、外傷などが挙げられ、基底細胞がんを発症する前に脂腺母斑、色素性乾皮症、慢性の放射線皮膚炎などの病変がみられるのも特徴です。

主な症状ですが、これはほくろによく似ている黒もしくは黒褐色の軽度に隆起した皮疹です。鼻の周囲や目の近くに発生することが多く、病状が進行すると中央部は窪んでいき、潰瘍化していきます。患者さんは中年以降~高齢者が多く、痛みやかゆみといったものはみられません。

基底細胞癌が疑われる場合は、ダーモスコピーで患部を確認し、同がんでみられる特徴をチェックするなどして診断をつけていきます。

治療について

病変部位を外科的切除によって切り取ることが基本となります。なお日本人の皮膚がん患者さんで、最も頻度が高いのが基底細胞がんです。このがんによる転移は可能性が極めて少ないとされ、予後は良好なことが多いです。

陥入爪

陥入爪とは

陥入爪は、主に足の親指の爪で起こることが多く、爪の先端や側面が皮膚に刺さったり食い込んで(陥入)しまって炎症を起こしている状態を言います。似た状態に「巻き爪」がありますが、これは爪が筒状に変形している状態で、巻き爪があると陥入爪にもなりやすいですが、巻き爪がなくても陥入爪は起きます。
爪が食い込んだ部位は化膿し、感染性(化膿性)肉芽腫と呼ばれる赤い肉のような組織が盛り上がった状態になったり、指が腫れたりすることで、爪の食い込みと痛みはさらに強くなるという悪循環に陥ります。

発症の原因としては、靴による圧迫、深爪、スポーツでの激しい動きなどによる刺激、外傷による爪の損傷などが挙げられます。なお陥入爪による痛みから、多くの患者さんはできるだけ爪が痛まない歩き方をすることで脚や腰などに負担をかけ、引いては腰痛や膝痛などの原因にもなるので早めに治療を行うようにしましょう。

治療について

感染による炎症が強い場合には、まずは抗菌薬や抗炎症薬による内服・外用治療を行います。
並行して、テーピングによって爪が食い込んでいる皮膚を引っ張ることで爪の食い込みを軽減させるいくつかのテーピング法を行ったり、爪の縁の尖った部分を綿で保護したり(コットンパッキング法)、樹脂製の柔らかいチューブで覆うこと(ガター法)で爪の食い込みを防ぐなど、保存的な治療を行っていきます。
肉芽腫が大きい場合、腫れが強い場合には液体窒素や炭酸ガスレーザーを用いて、外科的に肉芽腫を取り除く処置を行います。
いずれの治療も、新たな爪が伸びるまで治療の継続が必要となります。